春の野辺を彩る、身近な野草の代表格「カラスノエンドウ」
春の訪れとともに、道端や空き地で鮮やかな紫色の花を咲かせるカラスノエンドウ。マメ科の越年草で、正式な和名はヤハズエンドウといいますが、一般的にはカラスノエンドウの名で親しまれています。今回は、初心者の方でもすぐに発見し、観察を楽しめるポイントを詳しく解説します。
観察に適した場所
カラスノエンドウは非常に生命力が強く、日当たりの良い場所であればどこでも見ることができます。特に、公園の芝生の隅、住宅地の空き地、田畑のあぜ道、河川敷の土手などが絶好の観察スポットです。背の高い草に混じって、巻きひげを絡ませながらぐんぐんと伸びていく姿が見られます。都市部でもアスファルトの隙間から顔を出していることがあるほど、私たちの生活に密着した植物です。
開花時期
主な開花時期は三月から六月にかけてです。暖かい地域では二月の終わり頃から咲き始めることもあります。春の盛りには一面を紫色の花で埋め尽くすような群生が見られ、初夏になると花に代わってサヤエンドウに似た小さな実をたくさんつけます。花の時期から実が熟す時期まで、長い期間にわたって観察を楽しめるのが特徴です。
見分け方のポイント
最大の特徴は、蝶が羽を広げたような形をした紅紫色の花です。花の大きさは一センチから一・五センチほどで、葉の付け根に一つから三個ほどまとまって咲きます。葉は「偶数羽状複葉」と呼ばれ、小さな楕円形の葉が左右に並んでつきますが、その先端が数本に分かれた「巻きひげ」になっているのが大きな特徴です。この巻きひげを周囲の植物やフェンスに絡みつかせて、自分の体を支えながら高く成長していきます。また、葉の形が弓道の矢の末端(矢筈)に似ていることから、ヤハズエンドウという和名がつきました。
似ている種類との違い
カラスノエンドウの仲間には、名前に鳥の名前がついた似ている植物がいくつかあります。最も見間違えやすいのが「スズメノエンドウ」です。こちらは花が三ミリから四ミリと非常に小さく、色は白っぽいため、鮮やかで大きいカラスノエンドウとは一目で見分けがつきます。また、両者の中間の大きさであることから名付けられた「カスマグサ」(カラスの『カ』とスズメの『ス』の間にある草という意味)も存在します。カスマグサは花が淡い紫色で、一か所から二個ずつ花を咲かせることが多いという特徴があります。大きさや色の鮮やかさに注目すると、カラスノエンドウの力強さが際立ちます。
観察のコツ
カラスノエンドウを観察する際は、ぜひ花だけでなく「葉の根元」に注目してみてください。葉の付け根にある小さな托葉という部分に、小さな黒い点のようなものが見つかるはずです。これは「花外蜜腺」と呼ばれるもので、ここから甘い蜜を出してアリを呼び寄せます。アリを味方につけることで、自分の葉を食べに来る天敵から身を守ってもらうという、植物と昆虫の不思議な共生関係を間近で観察することができます。
また、初夏に黒く熟した実は「カラス」の名の由来の一つとも言われます。この実は乾燥すると勢いよくねじれながら弾け、中の種子を遠くへ飛ばします。熟した実を見つけたら、その独特の形や色を観察してみるのも面白いでしょう。さらに、昔から子供たちの遊びとして、中の種を取り除いてから口に含み「ピーピー」と音を鳴らす「草笛」としても親しまれてきました。視覚だけでなく、触覚や音でも楽しめるのがカラスノエンドウの大きな魅力です。
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