秋の七草のひとつ、キキョウを愛でる
古くから日本人に愛されてきたキキョウは、秋の七草のひとつとして万葉集の時代から歌に詠まれてきました。凛とした青紫色の花びらが星型に開く姿は、日本の夏から秋にかけての風物詩です。かつては日当たりの良い草原でごく普通に見られましたが、現在では野生種が減少し、絶滅危惧種に指定されている地域も多くあります。しかし、園芸品種として公園や寺院、庭先などで広く親しまれており、初心者でも比較的容易に観察できる植物です。今回は、知っているようで意外と知らないキキョウの観察ポイントを詳しく解説します。
キキョウを観察するための基本情報
開花時期
キキョウの花期は意外に長く、六月から九月頃にかけて咲き続けます。最も見頃となるのは、梅雨明けから初秋にかけてです。一度花が咲き終わっても、切り戻しをすることで再び花をつける性質があるため、長い期間その姿を楽しむことができます。朝露に濡れた姿や、夕暮れ時の淡い光の中で見る青紫色の花は、格別の美しさがあります。
観察に適した場所
野生のキキョウを探すのは現代では困難ですが、観察を目的とするならば、古い歴史を持つ寺院の境内や、手入れの行き届いた植物園、都市部の公園の花壇が最適です。キキョウは日当たりと水はけの良い場所を好むため、遮るもののない明るい斜面や広場に植えられていることが多いです。特に京都などの古都では、キキョウの名所として知られる寺院が点在しており、群生する姿を鑑賞することができます。
初心者のための見分け方
特徴的な花とつぼみの形
キキョウの最大の特徴は、開花直前のつぼみの形にあります。ぷっくりと膨らんだ紙風船のような形をしており、英名でも「気球のような花」を意味する名前が付けられているほどです。この状態から、先端が五つに割れて星型の花が開きます。花びらは五枚に見えますが、実は根元でつながっている合弁花です。色は鮮やかな青紫色が基本ですが、品種によっては白やピンク色のもの、また八重咲きのものも存在します。
葉のつき方と草姿
茎は真っ直ぐに直立し、高さは五十センチメートルから一メートルほどに成長します。葉はやや厚みがあり、形は卵状の楕円形で、縁には鋭いギザギザ(鋸歯)があるのが特徴です。葉のつき方は、一つの節に二枚の葉が向かい合ってつく「対生」や、三枚以上の葉が輪のように描く「輪生」などが見られます。茎や葉を傷つけると、白い乳液のような汁が出るのもキキョウ科の植物に共通する特徴です。
間違えやすい似ている種類
キキョウと見間違えやすい植物には、同じキキョウ科の仲間がいくつかあります。代表的なものは以下の通りです。
ホタルブクロ
初夏に咲くホタルブクロは、花の形が釣鐘状(ベル型)をしており、下を向いて咲くのが特徴です。キキョウは上向き、あるいは横向きに星型の花を咲かせるため、花の向きに注目すれば簡単に見分けることができます。
キキョウソウ
道端や空き地で見かけるキキョウソウは、キキョウをそのまま小さくしたような五角形の花を咲かせますが、花の直径が一センチメートルから二センチメートル程度と非常に小型です。また、葉が茎を抱くように丸くついている点で見分けることが可能です。
観察を楽しむためのコツ
つぼみが膨らむ様子を観察する
キキョウの観察で最も面白いのは、つぼみの成長過程です。最初は小さくて平たい形をしていますが、開花が近づくにつれて内部に空気が溜まったかのように大きく膨らんでいきます。指で触れると弾力があり、まさに風船そのものです。いつ開くのかを想像しながら、この膨らみ具合を観察するのも楽しみの一つです。
おしべとめしべの変化に注目
キキョウには、同じ花の中で雄から雌へと役割を変える「雄性先熟」という仕組みがあります。咲いたばかりの花の中をのぞくと、おしべが花粉を出していますが、この時めしべの先はまだ閉じています。時間が経つとおしべがしおれ、代わりにめしべの先が五つに割れて開きます。これは、自分の花粉で受粉してしまう「自家受粉」を避けるための植物の知恵です。花の状態をじっくり観察して、その花がいま「お父さん」の段階なのか「お母さん」の段階なのかを推測してみるのも、一歩進んだ観察の楽しみ方です。
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