クツワムシの観察ガイド・図鑑

秋の夜長を彩る大合唱の主役、クツワムシ

秋の鳴く虫を代表する存在であり、その力強い音色で知られるのがクツワムシです。名前の由来は、平安時代から使われていた馬の具である「銜(くつわ)」が触れ合う音に似ていることから名付けられたと言われています。かつては都会の近郊でも広く見られましたが、現在では生息地が限定されつつあり、里山の豊かな自然を象徴する昆虫の一つとなっています。

観察に適した場所と時期

見られる場所

クツワムシは、主に平地から低山地の明るい林の縁や、背丈の高い草が茂る場所に生息しています。特に、彼らの大好物である「クズ」という植物が生い茂っている場所を探すのが近道です。クズの大きな葉は、彼らにとって食事の場であると同時に、日中の隠れ家にもなります。また、河川敷の藪や、手入れの行き届いた公園の植え込みで見つかることもあります。

見られる季節

成虫が観察できるのは、八月の下旬から十一月の上旬頃までです。最も活発に鳴き声を響かせるのは九月の夜間で、気温が下がり始める時期にその活動はピークを迎えます。卵で冬を越し、春に孵化した幼虫は、数回の脱皮を繰り返して夏の終わりに成虫へと姿を変えます。

クツワムシの見分け方と似ている種類

姿と色の特徴

体長は五十ミリメートルから五十五ミリメートルほどで、キリギリスの仲間の中でも最大級の大きさを誇ります。他の種類に比べて体全体が横に平たく、ずんぐりとした重厚感のある体格が特徴です。体色には鮮やかな緑色の個体と、枯れ葉のような褐色の個体の二つの型が存在し、同じ場所でも両方のタイプが混在して見られます。翅には木の葉の脈に似た模様があり、草の中に紛れると見つけるのが非常に困難な、見事な擬態能力を持っています。

似ている種類との違い

よく似た種類にキリギリスやタイワンクツワムシがいます。キリギリスは翅がより細長く、足に鋭い棘が目立ちますが、クツワムシは翅の幅が非常に広く、丸みを帯びている点で見分けがつきます。また、南西諸島などに生息するタイワンクツワムシとは、鳴き声や背中の模様の細部で区別できますが、本州で見られる一般的なクツワムシは、その圧倒的な音量と「ガチャガチャ」という独特の連続した鳴き声で判別が容易です。

観察・採集のコツ

クツワムシは夜行性のため、昼間に見つけるのは至難の業です。夜、鳴き声を頼りに生息場所を絞り込み、懐中電灯を使って探すのが最も効率的です。近づくと鳴き止んでしまいますが、しばらくじっとしていると再び鳴き始めるので、その隙に光を当てて探しましょう。非常に警戒心が強く、足音が響くとすぐに草の根元に逃げ込んでしまうため、忍び足で近づくのがコツです。

飼育のコツと注意点

大型で力も強いため、飼育にはゆとりのある大きさの飼育容器が必要です。蒸れに弱いので、風通しの良い網状のケースが適しています。餌はクズやヨモギの葉などの植物質を中心に、ナスやキュウリ、リンゴなどの野菜や果物もよく食べます。動物質の餌として、市販のスズムシ用の餌や、煮干しなどを少量与えると健康を維持しやすくなります。足場となる枝や、隠れ家となる枯れ葉を入れてあげると、落ち着いて生活してくれます。また、オスは夜間に非常に大きな声で鳴くため、屋内で飼育する際は近隣への配慮が必要な場合もあります。秋の深まりとともに一生を終える昆虫ですので、その短い期間を大切に観察しましょう。

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