クマゼミの観察ガイド・図鑑

都会の夏を象徴する日本最大級のセミ「クマゼミ」

夏の盛り、日の出とともに「シャアシャアシャア」という激しい鳴き声を響かせるクマゼミは、西日本を中心に馴染み深い大型のセミです。その力強い姿と圧倒的な声量から、まさに「夏の王様」と呼ぶにふさわしい存在です。かつては暖かい地域に限定して生息していましたが、近年では関東地方などの都市部でもごく普通に見られるようになりました。今回は、初心者の方でも楽しめるクマゼミの観察ポイントをご紹介します。

見られる季節と観察に適した場所

クマゼミが成虫として姿を現すのは、主に六月下旬から九月上旬にかけてです。最も活発に活動するのは梅雨明けから八月の中旬で、特に午前中の早い時間帯に一斉に鳴き交わす様子が観察できます。午後の暑い時間帯になると鳴き止むことが多いため、観察や採集は朝のうちに行うのがおすすめです。

観察に適した場所は、意外にも山奥の雑木林よりも、都市部の公園や街路樹、庭先といった身近な環境です。クマゼミの幼虫は非常に硬い地面を掘り進む力が強いため、踏み固められた公園の地面でも生き抜くことができます。ケヤキ、サクラ、センダンといった樹木を好み、それらが植えられた明るく開けた場所を探すと見つけやすいでしょう。木の幹の比較的低い位置に止まっていることもあるため、網を使わずに手で捕まえられるチャンスも多いセミです。

クマゼミの見分け方

クマゼミを他のセミと見分けるポイントは、その大きさと色、そして翅の特徴にあります。体長は六センチメートルから七センチメートルほどになり、日本に生息するセミの中では最大級の部類に入ります。背中側は光沢のある真っ黒な色をしており、腹側は鮮やかなオレンジ色や薄い緑色が混じったような色合いをしています。

最大の特徴は、翅が完全に透明であることです。翅の脈(筋の部分)は付け根付近が緑色をしており、光に透かすと非常に美しく見えます。また、オスにはお腹に大きなオレンジ色の「腹弁(ふくべん)」と呼ばれる音を出すための器官があり、これが非常によく目立つのも特徴です。メスにはこの腹弁がなく、お尻の先に産卵管があります。

似ている種類との違い

クマゼミと混同されやすい種類に「ミンミンゼミ」がいます。どちらも透明な翅を持っていますが、見分けるのは難しくありません。ミンミンゼミは体全体に緑色の斑紋が多く、クマゼミよりも一回り小ぶりです。また、鳴き声も「ミーンミンミン」と独特の節回しがあるため、音を聞けばすぐに区別がつきます。

もう一種、都市部で多い「アブラゼミ」は、翅が茶色くて不透明であるため、一目で見分けることが可能です。クマゼミはアブラゼミよりも高い位置を好む傾向にありますが、どちらも同じ木に止まっていることも多いため、見比べてみるとその姿の違いがよく分かります。

観察と飼育のコツ

クマゼミの観察で最も感動的なのは、夜から早朝にかけて行われる「羽化(うか)」の瞬間です。夕方、地面から出てきて木を登る幼虫を見つけたら、家の中に持ち帰ってカーテンなどに止まらせてみましょう。背中が割れ、真っ白な成虫がゆっくりと出てくる様子は神秘的です。翌朝には体が黒く固まり、美しい透明な翅を広げた姿を見ることができます。

飼育については、セミ全般に言えることですが、成虫の寿命は短く、狭いカゴの中では数日しか生きられません。基本的には、捕まえたその日のうちに観察を終えて逃がしてあげるのが理想的です。どうしても一晩観察したい場合は、大きめの虫かごに新鮮な樹木の枝を入れ、脱脂綿に水を含ませたものを置いて乾燥を防いでください。また、クマゼミは非常に力が強く羽ばたく音も大きいため、カゴの中で暴れて翅を傷めないよう注意が必要です。

自然界での力強い生命力を感じさせてくれるクマゼミ。この夏はぜひ、近くの公園でその黒い魚のようなシルエットを探してみてください。

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